多彩な“こわさ”を味わえる、ココロにしみる名古屋こわい映画祭

ーー「名古屋こわい映画祭」は「広島こわい映画祭」を引き継いでおられるのですね。「広島こわい映画祭」同様に矢澤先生のゼミ生の皆さんが運営しているのでしょうか?

(矢澤教授)そうですね。矢澤ゼミとして、ゼミの学生が主体となって運営しています。2025年はゼミ生が15人いまして、私を入れて16人の体制になります。

広島こわい映画祭2024のインタビューはこちら

ーー「名古屋こわい映画祭」はゼミの教育の一環なのでしょうか?

(矢澤教授)はい、ゼミでの正式な活動です。イベントマネジメントやアントレプレナーシップ(起業家精神)教育の一環として行っています。計画を立て、事業収支を組み、運営し、利益を出すところまでを行います。学生自身が一定額を出資し、投資回収までを行う。企業経営のシミュレーションのような実践学習ですね。

ーー1年目で15人もゼミ生がいるということは、この「名古屋こわい映画祭」の企画が学生の気持ちに響いたんじゃないですか。

(矢澤教授)そうですね、倍率はかなり高かったです。広島こわい映画祭を事前に調べた上で「(映画祭では)こういうことをやりたい」と考えて入ってくる学生も多いです。

ーー15人のゼミ生のうち、ホラーが苦手な人もいるのではないですか?

(矢澤教授)何人かはいます(笑)。でも分かった上で入ってくれていますね。

愛知大学経営学部 矢澤利弘教授

ホラーの注目度は高まっている

ーー映画祭のテーマに「こわい」を選んだ理由を教えていただけますでしょうか。

(矢澤教授)日本各地で数多くの映画祭が開催されています。その中で、新しい映画祭としては特定のジャンルに絞ることがマーケティング的に重要です。また、日本ではかつてファンタスティック映画祭がいくつかありましたが、年々減ってきて最近ではほとんどなくなってしまいました。ホラーやファンタスティック映画のクリエイターも多く、観客も根強いファンが多いので、このジャンルを残していきたい気持ちもありました。

ーーホラーは最近注目されているようですね。

(矢澤教授)そうなんですよ。世界的にもホラーの注目度は高まっていると感じています。

ーー矢澤先生は映画評論の研究もされていますね。

(矢澤教授)はい。特に『サスペリア』や『フェノミナ』のダリオ・アルジェント監督を熱心に研究しています。ダリオ・アルジェント監督はイタリアのホラー映画の巨匠ですが、私は監督を研究する「アルジェント研究会」の会長も務めており、2024年からは劇場公開の字幕監修やパンフレット執筆など、総監修のような形で関わっています。監督は1940年生まれで、今年(2025年)に85歳ですがまだ現役で作品をつくっていますよ。

ーーダリオ・アルジェント監督の『サスペリア』や『フェノミナ』は私も若い頃に見ましたが、ホラー映画の傑作ですね。「名古屋こわい映画祭」の「こわい」はホラーをイメージされているのでしょうか。

(矢澤教授)「名古屋こわい映画祭」が定義する「こわい」はホラーだけではありません。日常生活におけるあらゆる“こわさ”——たとえば浮気が発覚しそうになって怖いとか、ハラハラドキドキするなど、心を大きく揺さぶるような映画を「こわい」と定義しています。幅広い意味での“心の叫び”を扱う、そんな映画祭です。

映画好きが集まって意見を交わせるような映画祭にしたい

ーー映画祭のコンセプトは何でしょうか?

(矢澤教授)「映画をつくる人」「映画をみる人」「映画を上映する人」この三者が同じ目線で交流できる映画祭です。監督が偉いとか、観客が上とかではなく、全員が対等な“映画好き”として関わる。受賞者が決まって拍手して終わり、ではなく“意見を交わせる場づくり”を目指しています。

ーー協賛などはあるのでしょうか?

(矢澤教授)協賛はいただいておりません。収入は作品エントリー料と入場料の2本柱です。授賞式の賞品提供など一部協賛はありますが、キャッシュでの協賛は受けていません。

ーー会場はシネマスコーレさんですね。

(矢澤教授)そうです。もともと名古屋でダリオ・アルジェントの特集上映を行ったとき、シネマスコーレさんで舞台挨拶をさせていただいたのがきっかけです。支配人の坪井さんもホラー映画好きで、意気投合しました。

ーー私も当サイトの“ミニシアター探訪”でシネマスコーレさんにお邪魔しました。坪井さんのインディペンデント映画の受け止め方が素晴らしいなと思いました。

(矢澤教授)ホラー映画愛と映画館の個性でシネマスコーレを選びました。インディペンデント映画に理解があり、ジャンル映画を応援している映画館ですよね。

ミニシアター探訪のシネマスコーレご紹介はこちら

ーー「名古屋こわい映画祭」の特徴は、どのようなものでしょうか。

(木場さん)「名古屋こわい映画祭」はとても温かい映画祭になると思います。アットホームな雰囲気で、ゲストからも「居心地がいい」と言われたいですね。質疑応答や交流会も充実して、観客も一緒に懇親会に参加でき、監督とお酒を飲みながら意見交換できる映画祭にしていきます。

作品選定もゼミ生全員で行います。15人全員がすべての作品を観て評価する。分担制ではなく全員制ですから、多くの支持を得た“ハズレがない”作品という自負があります。

名古屋こわい映画祭2025実行委員会副委員長 木場琢斗さん

ーーグランプリ以外にはどんな賞がありますか?

(木場さん)グランプリの他には、実行委員賞やシネマスコーレ賞、Cinemago(シネマゴ)賞などがあります。実行委員賞は映画祭を運営する実行委員が選出した作品に贈られるもので、シネマスコーレ賞はシネマスコーレの支配人・坪井さんにご鑑賞いただいて選ばれた作品に贈られます。受賞者には2026年のシネマスコーレでの興行権利がプレゼントされるんですよ。Cinemago賞は映画配給会社のCinemagoが選出する賞で、劇場での配給や宣伝をサポートしてもらえます。

ーー審査について教えてください。

(木場さん)審査基準は10項目あり、「こわさ」を中心に、演技力、映像、撮影技術などを総合的に100点満点で評価しています。一次審査でノミネートを決め、最終的なグランプリは観客投票で決まります。

ーー今後の「名古屋こわい映画祭」をどのように発展させていきたいですか?

(木場さん)名古屋という場所でまず「こわい」をテーマにした映画祭の存在を知ってもらいたいと思っています。一人でも多くの方にシネマスコーレに足を運んでもらい、映画館や地域と一緒に発展していける映画祭にしていきたいです。

Profile
矢澤利弘
名古屋こわい映画祭プロデューサー、愛知大学経営学部教授。県立広島大学名誉教授。公認会計士。 1965年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業、同大学院アジア太平洋研究科博士後期課程修了、博士(学術)。芸術学と経営学という異なる2つの分野で精力的に活動を続けている。 矢澤研究室が運営する広島こわい映画祭は7回の開催を重ねた。2025年からは名古屋に場所を移して開催する。

開催概要

第1回名古屋こわい映画祭

概要

開催日 11月22日 (土) 、23日 (日) 両日ともに18:30より

会 場 シネマスコーレ 愛知県名古屋市中村区椿町8−12 アートビル 1F

スケジュール

11/22 (土)
9:30 受付開始
10:10 開場
10:20 オープニング
10:30 プログラムA
12:30 休憩
13:30 プログラムB
15:30 休憩
16:00 プログラムC
18:00 休憩
18:30 懇親会  ※要参加申込

11/23 (日)
9:30 受付開始
10:10 開場
10:30 プログラムD
12:30 休憩
13:30 プログラムE
15:30 休憩
16:00 クロージング
18:00 授賞式
18:30 懇親会 ※要参加申込

※懇親会について
11月22日 (土)、23日 (日)の両日ともに18:30より懇親会を開催いたします。
一般のお客様もご参加いただけます。
参加には事前のお申し込みが必要です。参加費は5,000円(前払い制)となります。

参加申込はHPトップの「懇親会申込はこちら」をクリック!

上映プログラム

11/22(土)
プログラムA
『ひとがたに流れる血』 間合建介(45分)
『リフレイン』 司馬宙 (22分)
『愛鍵』 坂本直季 (15分)
『瞳の向こうに見えるもの』 山本尚志(9分)

プログラムB
『天国指針』 木下一心 (42分)
『明るい家族計画』 三浦賢太郎 (32分)
『器』 庭山智章 (14分)

プログラムC
『覗きの快楽』 東海林憲吾 (38分)
『実家』 海路 (39分)
『ウチの宇宙は三角形』 門田樹 (9分)

11/23(日)
プログラムD
『6日後』 佐々木真治 (20分)
『すみませんが、助けに行きませんよ!』 キム・テヒョン (25分)
『ACCESSORY TO MURDER』 湯浅充基 (16分)
『隣の家』 ぱん (15分)
『スマホの中のエイリアン』 川中玄貴 (21分)

プログラムE
『呵責』 佐藤祐介 (18分)
『あいをもとめて』 春名星 (21分)
『Crying B*tch』 津野励木 (15分)
『終わりなき世界を駆けるとき』 二野俊太 (15分)

クロージング
招待作品 『こびりついた残像』 高上雄太 (15分)

公式

Webサイト 
https://www.nagoyakowai.com/

X
https://x.com/nagokowa_movie

Instagram
https://www.instagram.com/nagoyakowaifilmfestival/

インタビュアー
井村哲郎

以前編集長をしていた東急沿線のフリーマガジン「SALUS」(毎月25万部発行)で、三谷幸喜、大林宣彦、堤幸彦など30名を超える映画監督に単独インタビュー。その他、テレビ番組案内誌やビデオ作品などでも俳優や文化人、経営者、一般人などを合わせると数百人にインタビューを行う。

自身も映像プロデューサー、ディレクターであることから視聴者目線に加えて制作者としての視点と切り口での質問を得意とする。