
今回は愛知県名古屋市のシネマスコーレを訪問。インディーズ映画に興味がある人ならば、その名前は聞いたことがあるはず。「熱狂を呼ぶミニシアター」というイメージを勝手に想像しながら、名古屋駅に降り立った。
シネマスコーレの黎明期はまさに激動の経営
JR名古屋駅には、太閤通口と桜通口という2 つの大きな出口がある。シネマスコーレは太閤通口側にあり、出るとすぐに縦書きのシネマスコーレという文字が見える。これはわかりやすい。

建物につくと、公開中映画のポスターが貼ってある。チケット売り場は昭和の雰囲気だ。さらになんと、現在公開中ではない、古い映画のパンフレットを販売している。
シネマスコーレはチケットをWeb販売していないそうだ。チケットは当日分を当日の朝に販売する。Web 販売が一般化してきている中、このシステムは懐かしい感が満載である。
さらに全席自由席!昔は、映画を好きな席で観るために、映画が始まる1時間ほど前からチケットを買って並んだものだ。今はWeb 販売が一般的になっており、時間・席が指定されているので、映画が始まる直前に映画館に行くことが多いが、昔は違った。でも早く行った分、映画への期待感が高まり、特別感があったような気がする。
本日は坪井篤史支配人にお話を伺うアポイントをとっている。
坪井支配人はアジア映画が好きで、若い頃からよくシネマスコーレに通っていたとのこと。お客様から転じてシネマスコーレで働くようになったそうである。

まずはシネマスコーレの設立の経緯を聞いてみた。
シネマスコーレは1983年2月19日に開業した。その当時名古屋には映画館はたくさんあったが、自分たちで自主映画を含めた映画をセレクトしている映画館は、1982 年に開業した名古屋シネマテークだけであった。
シネマスコーレは、『水のないプール』などを監督した若松孝二監督が開館し、自身の作品を上映する映画館をつくりたい、という思いで誕生した。とはいえ自分の映画以外にもさまざまな映画を上映するためには、映画館を運営した経験のある人が必要であった。そこで当時東京・池袋の文芸坐(現:新文芸坐)を辞めて、名古屋に帰っていた木全純治さん(現:シネマスコーレ代表取締役)を支配人としてシネマスコーレを運営することになる。
開業して最初の1 年は大苦戦し、やむを得ず新東宝の成人館と名画座を併用する興行形態に変換する。業績を立て直し、2 年間で成人館を辞めて、1985 年から通常の映画興行を行なっていく。この頃から、木全さん自身が面白いと思った映画を中心に編成を開発していく。東京のミニシアターで上映している作品やインディーズ系の映画を軸にラインナップして独自色を出した。特にまだ当時日本ではあまり上映されていなかった中国映画、台湾映画を上映するようになり、このアジア圏の映画がファンをつかみ、独自のラインナップ路線で進んでいき、成長していったそうだ。
映画の選定は独自路線で
上映作品は、例えば林海象監督の『夢みるように眠りたい』や張芸謀(チャン・イーモウ)監督の『紅いコーリャン』など。林監督や張監督は今でこそ巨匠であるが、当時はまだ今ほどの知名度はなかったのであろう。木全さんの目利き力が光ったエピソードである。
現在もシネマスコーレのスタッフたちが面白いと思った映画を上映していく方針は生きている。しかし自分が面白いと思わなくても観客もそうだとは限らない。

坪井支配人は、配給会社がシネマスコーレに話を持ってくるのは、シネマスコーレで上映することで化学反応が起きることを期待してくれている、と考えている。シネマスコーレで上映する意義がある作品はできる限り上映していきたい、とのこと。さらに自主映画の監督さんたちが熱意を持って交渉してきた場合、人との関係値も大事にして上映する場合もある、とのことだ。
坪井支配人からはインディーズ監督たちに対する意見も聞かせていただいた。「インディーズ映画は関わったスタッフだけで盛り上がる傾向があり、観客に見てもらうというよりも内向的な作品が多いと以前は思っていたんです。しかし2007 年に自分と同じ世代のインディーズ監督が映画を売り込んできて、その映画は観客のことを考えている作品でした。加えて自分と同じ世代の人たちがすごい熱量で映画をつくっているのを肌で感じ、インディーズ映画を積極的に取り入れるようになりました」

次第に「シネマスコーレで上映されるとインディーズ映画は化学反応を起こす流れ」ができていったそうだ。
坪井支配人は続けて話す。「今も月に2-5 本くらいインディーズ映画を上映しています。監督たちに『なぜスコーレで上映したいのですか?』と質問すると『自分の好きな監督がここで上映して登壇したので上映したい』と。この答えを聞くと、インディーズ映画にとってシネマスコーレは大切な場所なんだな、と実感します」
このような考え方のミニシアターの支配人がいると、界隈を盛り上げたい私はとても嬉しい。
映画館は監督とお客様の勝負する場所
シネマスコーレが起こす化学反応についても聞いてみた。
「シネマスコーレのお客様は、映画の評価を我々に伝えてくれるのですが、良い評価も悪い評価も監督にダイレクトに伝えてもらえる場をできるだけ設定するよう心掛けています。お客様は映画に対してお金を払っているので、自由に意見を言ってもいいと考えています。監督たちは悪い評価であっても『なにくそ』と思って、次はいい映画を持ってくる。そんな気概のある映画監督たちをたくさん見てきました。時には監督とお客様が口論になることもありましたが、『次はあのお客さんに認めてもらえる映画を持ってくるぞ』と監督は話していて、こういうところからも化学反応が生まれるんだな、と感じました」

さらに映画館と映画祭との違いについて聞いてみた。
「映画祭では、お客様は観たい映画だけでなく映画祭で上映される映画全てにお金を払っていますが、映画館はその映画にだけお金を払っているところがまず違います。つまり映画館には特定の映画にお金を払って観に来るわけです。だから映画館は監督とお客様の真剣勝負の場所でもあるのです。監督には是非、映画館で勝負して欲しいですね」
映画館は監督にとって勝負の場所、なるほど、説得力がある言葉だ。映画監督は、こういった厳しい環境に飛び込んでいくほうが飛躍していくのであろう。
「映画祭に出して賞をもらうことで満足していてはダメ。自分の映画にお金を払って観てくれるお客様の反応が重要で、それを恐れてはいけない」という坪井さんの考え、すごいことだと感じた。
今はメジャーになった監督も「スコーレのお客様の反応が聞きたい」と、シネマスコーレで自身の作品を上映し登壇したいという気持ちも理解できる。
新しいお客様を開拓するのはとても重要
シネコンとは異なる体験ができるのが、ミニシアター。どのミニシアターもシネコンとは差別化を図っているが、ミニシアターの固定客だけでは映画界の持続的成長ができず、もっと間口を広げなければならないと私は常々考えている。
この間口を広げる点についても坪井支配人に聞いてみた。坪井支配人は木全代表と、名古屋でしかできないことをやろうと話しているそうである。
「間口は広げていかなければいけないと切実に感じています。そのためにはインディーズ系の監督たちがシネマスコーレで育っていき、メジャーになり、シネコンで上映するようになってもシネマスコーレでも上映し、登壇してもらうことで新しいお客様を開拓するのも一つの方法だと思っています」
実際シネマスコーレで育った監督の中にはこのような監督もいらっしゃるそうだ。
もちろんシネコンで登壇した監督にシネマスコーレでも登壇してもらえれば、シネコンのみ行っていたお客様にもシネマスコーレに足を運んでもらえるきっかけになるだろう。
並ぶことも映画体験の一つ
シネマスコーレはスクリーンが一つで席数51 席。待合も狭く、せいぜい2-3 人しか待つことができない。最近は2 階に待合スペースをつくったが、それでも人気のある映画だと屋外に並ぶことも多々あるそう。映画を見るために屋外で並ぶとはシネコンでは考えられないことだ。常連さんは当然のこととして並んでいるが、初めてシネマスコーレに来たお客様はこの「外で待つ」という異体験が映画というよりもライブハウスに来た感覚になり、より「映画を観るぞ」という意識になっているのではないか。
監督や役者さんも同じ入り口から出入りするので、お客様には入り待ち、出待ち的な感覚もあると思う。これは木全代表の「並ぶことも映画体験の一つにしたい」という考えに基づいている。坪井支配人は、当初はお客様にご迷惑をかけているのではないかと思っていたが、今は「同じ映画を観に来ている他のお客様と、待っている間に会話をするなど、ここでも化学反応が起きて、シネマスコーレの独特の良さが出ている」と感じているそうだ。
会員制度は、一般会員は年間1,500円、学生会員・シニア会員は年間1,000円を支払うと、以下の会員料金で鑑賞できる(2025 年3 月現在)。
一般 1,800 円 → (会員料金)1,300 円
シニア 1,300 円 → (会員料金)1,100 円
学生 1,300 円 → (会員料金)1,000 円
ミニシアターは独特の雰囲気があり、シネコンしか行ったことのないお客様は入りづらい雰囲気があるかもしれない。
しかし、入ってみればシネコンとは違った良さを感じられる。シネマスコーレは、チケットは当日映画館でしか買えないし、全席自由である。「不便」と思う人もいるかもしれないが、これらも含めて映画体験ととらえ、映画鑑賞をじっくりと楽しむこともできるのではないだろうか。
ぜひシネマスコーレに足を踏み入れてみてほしい。きっと、懐かしさと新しさを両方感じられるだろう。

シネマスコーレ概要
住所 愛知県名古屋市中村区椿町8-12 アートビル1F
JR名古屋駅、太閤口通口より西へ徒歩2分。 ミニストップ南側アートビル1F
TEL 052-452-6036
FAX 052-452-5572
席数
51席
契約駐車場
オータケパーキング
7階建て立体駐車場(車高2.1Mまで)
中村区椿町20-18 TEL 052-452-2095
駐車料金 600円~800円 200円割引
駐車料金 900円以上 300円割引
お徳情報
平成19年1月1日よりオータケ第一パーキングの駐車カードを映画館窓口に提示していただくと
当日一般入場料金より200引きとなります。
※1台につきお一人様限り
※他の割引・サービスデー等との併用不可
ご入場の際、駐車券をご呈示ください。
整理券
シネマスコーレは公開される映画の整理券を当日の朝から配布しております。
※1本目の映画が上映される40分前から劇場オープンとなります。その日に上映されるすべての作品のチケットをご購入いただけます。(10:20スタートなら9:40ごろより)
料金(2025年3月現在)
一般(大人)1800円
大学生・専門学生1300円
シニア(60歳以上)1300円
中高生以下1000円
障がい者手帳をお持ちの方1100円(同伴2名まで)
幼児(3歳~)800円
会員1300円 シニア会員1100円 学生会員1000円
劇場ホームページ http://www.cinemaskhole.co.jp/cinema/html/
Instagram https://www.instagram.com/cinemaskhole/