老朽化した家にひとりで住み続ける父を、翔太と美沙が兄妹揃って訪ねた日のこと。どれだけ引っ越しを勧めるも頑として首を縦に振らない父。そんな彼らのもとに、明らかに幼児向けのおもちゃが宅配便で届く。 翔太は父の認知症を疑うが、美沙は無邪気に遊びはじめ、やがて家中を走り回る――まるで子ども時代のように。その光景に、翔太の心は過去へと引き戻される。かつてこの家で家族と笑い合い、泣いた、あのかけがえのない日々。時間が止まったような家で、家族の記憶と向き合う兄妹の一日。 それは、忘れかけていた大切なものを思い出させてくれる、やさしくて少し切ない物語。