映画祭の立ち上げは映画館とのタッグから
ーー熊谷駅前短編映画祭の開催に至った経緯を教えてください。
2023年1月頃、福井駅前短編映画祭の立ち上げにも関わった和歌山大学の木川剛志教授と、ある映画イベントでご一緒する機会がありました。イベント後に、木川教授と熊谷駅ビルのシネマコンプレックス・シネティアラ21を運営する長谷川隆一さんと話し、「熊谷の文化的なイベントとして映画祭をやろう」という話が出ました。映画祭の運営経験がある木川教授や自分の映画祭のノウハウと、地元側の熱意がかみ合いそうだったので、「この組み合わせなら形にできるかもしれない」という感触がありました。

ーー長編映画でなく短編映画祭にしたのはなぜでしょうか。
長編映画では運営負荷が大きいことと、作品の応募も集めづらいところがあります。その点、短編映画は、製作している監督が多いため応募も集まりやすいですし、運営負担は軽減されます。短期間で立ち上げた映画祭ですが、当初の想定よりも多くの応募があり、手応えがあったことで、第2回、第3回と重ねられる形になりました。
ーー開催時期は2月ですね。この時期に開催する映画祭はあまり多くないですが、なぜこの時期に設定されたのでしょうか。
秋開催も検討しましたが、映画祭が集中しやすい時期でスケジュールが厳しくなりがちです。私自身も毎年11月に開催される田辺・弁慶映画祭のMC&コーディネーターであり、同じ時期の映画祭の開催は難しかったこともあります。
2月は比較的“映画祭が少ない時期”であり、かつ上映会場である映画館の編成も組みやすいこともあり、そうした事情も踏まえて2月開催に落ち着きました。
ーー会場となる「シネティアラ21」についても教えてください。
熊谷駅に直結した駅ビル内にある、独立系のシネコンです。駅前立地でアクセスが良いのは大きな強みだと思っています。
映画祭のコンセプトは熊谷に映画文化を根付かせ、若い人を応援していくこと
ーー熊谷駅前短編映画祭としてのコンセプトを教えてください。
二つあります。一つは、熊谷という地域に文化的な側面を根づかせること。若い人たちが文化に触れ、集える場にしていきたい思いがあります。もう一つは、新しい才能の発掘です。短編だからこそ出会える作り手や表現があるので、そこを丁寧に見つけていきたいと考えています。

ーー事務局はどのような体制で運営されているのでしょうか。
基本的には、シネティアラ21が主催であり、木川さんや私が加わって進めています。少ない人数で運営しており、体制としては充分ではなく、過渡期だと思っています。
ーー協賛はどのように集めていますか。
地元の企業・商店などから協賛金をいただいています。現状はまだすごく多いというわけではないですが、映画祭の運営にはとても助かっています。
ーー応募要項に「地域の魅力を伝える映像」「埼玉県を舞台にした作品」などの記載があります。これは“必須条件”なのでしょうか。
必須というより、ジャンル分け的な意味合いに近いです。地域に根づく映画祭として、そういった視点の作品が入ってくると嬉しい、という意図はあります。ただ、地域プロモーションを主目的にした映画祭ではありません。選考で“意識することはある”けれど、第一条件ではない、という位置づけです。

ーー応募本数はどのくらい集まっていますか。
毎年ほぼ同じで、だいたい115本程度の応募があります。立ち上げ当初から大きくは変わっていません。
ーーその中から、何本くらいに絞られるのでしょう。
熊谷駅前短編映画祭の特徴として、一般的な「入選」ではなく「入賞」という形をとっています。ノミネートされてから受賞というのではなく、上映する作品は優秀作品としてすべてを“入賞”として位置づけています。毎年だいたい17〜18本で、第3回は18本になる予定です。
ーーコンペ作品は1日で上映ということですが、18作品は多いですね!
休憩時間をできるだけ短くして、なるべく多くの作品をかけたい、という考え方です。朝10時頃から夕方6時頃まで、トイレ休憩は挟みますが、長い昼休みを取るような形にはしていません。お客様の負担は増えますが、作品数をしっかり届けたい気持ちが強いです。

グランプリ、審査員特別賞はシネティアラ21で1週間上映できる
ーー審査はどのようにされているのでしょうか?
まず一次審査で私を含めた事務局スタッフで絞り込みます。そして主催と相談の上、入賞作品を決めます。
ゲスト審査員(地元にゆかりのある監督など)には土曜日に入賞作品をまとめて観ていただき、翌日(日曜日)に最終的な協議を経て受賞作を決める流れです。観客投票もあります。
ーー賞の種類と、熊谷駅前短編映画祭ならではの特徴を教えてください。
賞としては、グランプリ、審査員特別賞、観客賞、俳優賞などがあり、年によって運用の細部は調整しています。さらに、状況に応じて映画館独自の賞を設けることもあります。
特徴的なのは、グランプリ、審査員特別賞を受賞した作品は、シネティアラ21で“その年の夏〜秋頃に1週間上映”されることです。映画祭で終わらず、映画館での興行につながる導線を持たせています。
ーー賞金はありますか。
賞金はなく地元の特産品などを副賞としてお渡ししています。
第3回は映画祭のアンバサダーとして芋生悠さんを起用
ーー第3回は映画祭にアンバサダーを起用するようですね。
俳優の芋生悠さんにアンバサダーをお願いしました。2025年には芋生悠さんが監督・脚本・主演した『解放』が劇場公開され、芋生さん自身も数多くのインディーズ短編映画に出演されています。

ーーこれまでのゲスト審査員には、どのような方が参加されていますか。
第1回は熊谷市出身の『あんのこと』の入江悠監督、第2回『桐島、部活やめるってよ』『敵』の吉田大八監督にゲスト審査員をお願いしました。第3回は『月とキャベツ』など多くの作品をつくっている篠原哲雄監督をお招きする予定です。熊谷にゆかりのある方や、話題性のある方をお招きしていきたいと思っています。
ーー今後どのように映画祭を発展させていきたいですか。
一番は、地元に完全に根づいたものにしていきたい、ということです。そのためには知名度を上げる必要があります。手段はいろいろ考えられますが、例えば「思わず驚くようなゲスト審査員」を招くことで話題をつくり、“あの人が来るなら行ってみよう”という熱量を生み出すことも一つの方法だと思っています。地道なところでは、ポスター掲出やチラシ設置など、地域の中での露出を増やすことも続けていきます。
また、地元ボランティアの広がりや、近隣の大学との連携も重要です。ありがたいことに当日の協力はありますが、日常的に関わっていただく体制をどうつくるかは、これからの課題として考えています。
開催概要
第3回熊谷駅前短編映画祭
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概要
2026年2月21日(土)〜22日(日)(予定)
シネティアラ21 埼玉県熊谷市筑波3丁目202 ティアラ21ビル 8F
https://www.ct-21.jp/
入選作品
『円縁』
主演 紗麗
監督 近棟教聖
『存在のゆらめき』
主演 佐藤あみ
監督 鈴木剛志
『ヨミノヒカリ』
主演 宝保里実 小出水賢一郎
監督 須籐 彰
『こびりついた残像』
主演 伊藤謙心
監督 高上雄太
『海とロボット』
主演 音花(おとは)
監督 堀江 亮二
『ラストオーダー』
主演 竹石悟朗
監督 乙木勇人
『コウキとユウキ』
主演 李詩佑、與那覇琉生
監督 小澤亮介
『善人 Good Samaritan』
主演 長岩健人、石橋征太郎
監督 みやたにたかし
『国道7号線』
主演 ソウジ・アライ
監督 全辰隆
『太陽』
主演 榊原美鳳
監督 座間真知
『サラリーマン夢野靖の昼休み』
主演 平野 靖幸
監督 目黒 大輔
『15分間の奇跡』
主演 大和田紗希
監督 岡﨑貴宏
『マスミの空』
主演 佐々木真澄 役 前田 龍平
監督 坂井孝太朗
『thousand mile stare』
主演 tama-style
監督 tama-style
『スコノシュータ』
主演 鳥之海凪紗、保田泰志、星耕介
監督 鬼木幸治
『ファンタスティックベーカリー』
主演 きしあやこ
監督 きしあやこ
『思い立ったが吉祥寺』
主演 神坂 竜久
監督 いなだ ゆかり
『ごく普通の暮らしについて』
主演 日比美思
監督 ワタナベカズキ
招待作品
『本を綴る』(監督 篠原哲雄)
『振りふられ振りフル/ONE WAY LOVE』(監督 篠原哲雄)
アンバサダー
公式
井村哲郎
以前編集長をしていた東急沿線のフリーマガジン「SALUS」(毎月25万部発行)で、三谷幸喜、大林宣彦、堤幸彦など30名を超える映画監督に単独インタビュー。その他、テレビ番組案内誌やビデオ作品などでも俳優や文化人、経営者、一般人などを合わせると数百人にインタビューを行う。
自身も映像プロデューサー、ディレクターであることから視聴者目線に加えて制作者としての視点と切り口での質問を得意とする。