募集するのはオリジナル作品、30万円の制作助成金を提供
── 八王子Short Film映画祭の特色を教えてください。
出会い・愛・結婚」から1つのテーマを選ぶことと、オリジナル作品がつくれるということです。「学生の部」はテーマに沿った短編作品を募集しますが、「一般の部」では八王子を舞台とした作品の企画&プロットを募集し、審査を通過すると、30万円の助成金を受けてオリジナルの短編映画をつくることができます。ロケ地として八王子市にある古民家や学校などを使えますし、特別協賛の八王子日本閣さんでは、撮影はもちろんのこと、ブライダルメイクやウエディングドレスなども基本的には無料提供して下さいます。
映画制作は費用も時間もかかり、都内で撮影許可を取ることも難しい中、これだけの恵まれた環境で作品を撮れる機会はなかなかないと思います。私たちの映画祭は「新人映画監督の登竜門」となることを目指しており、ここでつくった作品を名刺代わりに、多くの才能が羽ばたいて欲しいと願っています。
さらに映画を通じて、より多くの人に八王子という街の魅力にも気づいてもらえると思います。八王子を文化・芸術面から支援していくことも、この映画祭のコンセプトの一つです。
── 第3回では「カメラを止めるな!」(以下「カメ止め」)の上田慎一郎監督が「一般の部」でグランプリを受賞されていますね。どのような作品だったのでしょうか。
グランプリ受賞作品は「カメ止め」の原型といった感じで、映画をつくる人たちが主人公の、笑って泣ける映画でした。上田監督はとにかく映画が好きで、映画愛と人間愛が強い監督さんで、当時からインディーズ映画業界ではファンが多かったですね。「カメ止め」のブレイクは私たちも大興奮で、本当にうれしかったです。関係者みんなが「八王子Short Film映画祭をやってよかった」と心から思った出来事でした。今でも映画祭が続いている一つの大きな原動力になっています。昨年は審査員として参加して下さるなど、上田監督は八王子Short Film映画祭にいつも全面協力をして下さるので、とてもありがたく思っています。
── 第11回となる今年は、「一般の部」でさらなる協賛スポンサーをつける予定ですね。
スポンサーが増えれば助成金も増えて、その分監督や制作者の負担を軽くすることができると思うので、より多くのスポンサーをつけたいと思っています。それでも、主役はあくまでも映画であり監督です。今回の映画制作にあたり、本編中に協賛企業名や商品名等を入れていただく場合もありますが、スポンサーの方々には「主役は映画であり、それを最優先に考えて頂きたい」とお願いしています。第1回から特別協賛して下さっている八王子日本閣さんも、監督の作家性が発揮できるよう、見守って下さっていますね。
監督が撮りたいと思う作家性の強い作品を期待している
── どのような方が応募されてくるのでしょうか。特に「一般の部」は受賞経験が応募条件の一つになっていますので、経験豊富な監督が多いのでしょうか。
もちろん経験豊富な方も応募されます。しかし2年前に「一般の部」でノミネートされた三好監督は現役大学生でしたし、年齢層は20~50代と毎年幅広いですね。今年に関しては、20代の方や女性の方が多かった印象があります。応募条件に受賞経験を入れているのは、何らかの受賞経験がある人ならば、一定レベルの映像制作スキルがあり、作品完成に向けて信頼できるだろう、という意味合いなんですね。ですから賞の大小は関係なく、例えば学内コンテストやあまり知名度のないイベントの入賞などでも特に問題ありません。
── どんな作品の応募を期待していますか。
個人的には監督自身が強く撮りたいと思う、作家性が強い作品を期待しています。テーマが「出会い・愛・結婚」なので、分かりやすいハッピーエンドで終わるような作品が多いのですが、それでいいのかなと。個性的すぎて審査が通らない、といったことは一切ないですし、「よく分からないけど面白い」というものを支援することで初めてその人の才能を応援できることになると思うので、そういった点を意識して応募してもらえるとありがたいですね。
受賞作を見てもらうチャネルを増やし、映画ファン、八王子ファンを増やす
── インディーズ映画業界の現状をどのように思われますか。
一言で言えば、厳しいですよね。映画を撮っても採算がとれないし、将来が見えてこない。例えば八王子Short Film映画祭で受賞したからといって、受賞した監督の将来が変わるようなことは多くありません。そういった現状を変えるために、長編を撮れるような支援や、より多くの人に作品を見てもらうためのチャネルを増やしてきたいですね。例えば、映画館やホール以外などで作品を流すようなことも考えています。きちんとお金が入って経済として成り立つことが理想ではありますが、まずは知ってもらうことが大切だと思います。この作品は面白い、コンテンツに力があると思ってもらえれば、応援してくれる人が増える。私たちの映画祭は八王子という「街」としての映画祭なので、八王子の企業や個人から味方を増やしていきたいと思います。
── 今後、八王子Short Film映画祭をどのように発展させていきたいですか。
八王子市は大学や専門学校などが25校あり、全国有数の学園都市といわれていますので、「学生の部」にもっと力を入れていきたいですね。「一般の部」同様に助成金を出していったり、上映作品数を増やすことなどを考えています。そして「八王子市といえば八王子Short Film映画祭」と言われるぐらい知名度を上げたいですね。最近、八王子駅近くにある「まちなか休憩所」で月1回の上映会を始めましたが、映画祭を知ってもらう機会を増やし、まずは地元での知名度を上げて応援してくれる人を増やしたいと考えています。
また2年前から台湾の高雄(たかお)映画祭と提携し、高雄(たかお)映画祭作品を借りて無料で上映しています。今後は作品だけでなく監督同士の交流なども行って、八王子や日本映画の魅力を台湾やアジアへ発信していきたいですね。
開催概要
第12回八王子Short Film映画祭
一般部門監督決定
厳正なる企画審査の結果、第12回映画祭で映画制作をして頂く一般部門ノミネート監督が決定致しました!
制作した映画は12月15日の第12回映画祭でプレミア公開となりますので宜しくお願い致します。
高村剛志 監督『落暉』
松本拓海&スティーヴン・ハイール 監督『30MINUTES』
宮本亮 監督『猫を飼えば良い』
村口知巳 監督『ホノルル』
長谷川千紗 監督『真夜中のティーパーティー』
菅原稜祐 監督『ナコーダー』
井村 哲郎
以前編集長をしていた東急沿線のフリーマガジン「SALUS」(毎月25万部発行)で、三谷幸喜、大林宣彦、堤幸彦など30名を超える映画監督に単独インタビュー。その他、テレビ番組案内誌やビデオ作品などでも俳優や文化人、経営者、一般人などを合わせると数百人にインタビューを行う。
自身も映像プロデューサー、ディレクターであることから視聴者目線に加えて制作者としての視点と切り口での質問を得意とする。