横濱インディペンデント・フィルム・フェスティバルとは
――横濱インディペンデント・フィルム・フェスティバルは、横浜シネマ・ジャック&ベティで開催されていた「横濱HAPPY MUS!C映画祭」が前身だったそうですね。
もともとは、僕が主催するイベントのプログラムの一つとして音楽映画をジャック&ベティさんで上映したことがきっかけで、「横濱HAPPY MUS!C映画祭」が生まれました。
「横濱HAPPY MUS!C映画祭」の立ち上げ時は選定した作品を上映するという形でした。コンペティション形式に形を変えて展開していく中で非常に多くの作品が集まり始めてきたこともあり、2016年から映画WEBマガジンcinefilと映画館ジャック&ベティさんの3社で組んで横濱インディペンデント・フィルム・フェスティバルが誕生しました。
――今は3社による運営なのですね!役割分担はどのような感じでしょうか。
全体を通して3社で運営していますが、作品の募集や一次審査はガチンコ・フィルムが中心となっています。会場の手配はジャック&ベティさん、PRと審査全体はcinefilさんが中心です。
――横濱インディペンデント・フィルム・フェスティバルのミッションやコンセプトを教えてください。
自主制作など小規模予算の映画をつくっている監督や製作者と出会い、作品が世の中にひろがるためのステップとなる映画祭を目指しています。時にはメジャーな作品の応募が来ることもあります。でもそこは作品外での関係性などを忖度せずに、作品が本映画祭の目的と合致するか、ということが大切だと思います。その上で厳正に審査させていただいています。その結果、メジャーな作品をお断りしてしまうこともあるし、上映させていただくこともあります。
インディペンデントと呼ぶ理由
――インディーズ、自主、インディペンデント。いろいろな呼称がありますが、飯塚さんの中で区別はされていらっしゃいますか?
僕自身は「インディペンデント」で統一しています。「インディーズ」や「自主」は、つくり手を固定してしまうような気がします。つくり手を属性化することなく「独立独歩、どこにも迎合しない」という意識がある映画を「インディペンデント」と呼称しています。そういった作品をできる限り選んで上映していきたいと思っています。
――監督がつくりたい作品ということですね。
独立性の他に、作家性というものを大切にしています。配給会社や製作会社の有無にかかわらず、監督が気概をもって迎合せずにつくる作品を「インディペンデント」と呼ぶようにしています。
――他の映画祭では協賛をとっているところも多いですが、協賛などはあるのでしょうか?
協賛はあえてとっていないです。イベントや映画製作に携わると、外からのお金には影響されることが多いと実感しています。本来の目的と違うことを要求されることも多く、本来の「純」な部分が薄まることも多々あります。僕が主催するイベントでは、外部から資金をいただくことはできる限りしたくはないですね。
――頑張り切れるかは重要ですよね。
当然、お金がないと規模が小さくなります。横濱インディペンデントは小さいままですが、その代わり良質なものを出していこう、と。大きくすればするほど薄まることは避けたいと思っています。
――さまざまな映画祭がある中で、「横濱インディペンデント・フィルム・フェスティバルはこれだ」という特徴を教えてください。
横濱インディペンデント・フィルム・フェスティバルは、賞は出すけれど賞金は出さないので、他映画祭よりは弱い部分があるかもしれません。その代わり、お会いした監督で何かきっかけが持てるような監督に対しては、ガチンコ・フィルムから助成金を出して次作を応援したり、作品を劇場公開するまでの配給のお手伝いをしたりします。配給部門があるので、そういう形でガチンコ・フィルムを活用してくださいね、と監督にはお伝えしています。監督たちの負担のないようにやりくりしながら、映画館のスクリーンで作品を上映するサポートを行うことができます。

――横濱インディペンデント・フィルム・フェスティバルから賞をとった作品で公開した作品はあるのですか?
『この世はありきたり』(監督:塩出太志)ですね。あとはアニメ映画の『マウスマン~愛の塊~』(監督:ピエール伊東)、『怪人の偽証 冨樫興信所事件簿』(監督:福田航平)などです。
――授賞式当日で終わり、という映画祭が多い中、そのあとのフォローがなかなか難しいと思うのですが、横濱インディペンデント・フィルム・フェスティバルでは劇場上映をされる場合もあるのですね。
必ず授賞作の劇場公開をお手伝いするということではありませんが、作品の背景、監督との相性を総合的に判断しますね。特に小さい作品ほど、監督との相性は大切になってくると思います。
――配給では、監督と長期間ずっと並走することになりますね。
監督の想いもありますから。ほとんどの監督が配給は初めてになります。劇場での壁や、やりたいことができない場合のジレンマをどう解消してあげるかなども大事になってくると思います。
短編/中編/長編が出揃う、充実のコンペティション
――短編、中編、長編、アニメ、U22と5部門あるのですね。応募はどのくらいでしょうか?
応募はだいたい250から320作品くらいです。2024年は269作品の応募がありました。
――短編・中編・長編と揃っている映画祭はそれほど多くないと思います。さらにアニメとU22と、5部門もある。応募が一番多いのはどこでしょうか。
年によって異なりますが、多いのは短編・中編です。2023年まではさらに音楽部門・ドキュメンタリー部門もありましたが、今年からは短編・中編・長編に統合しました。「HAPPY MUS!C」からの流れで音楽部門があった、という状況です。
――審査はどのようにされているのでしょうか?
まずガチンコ・フィルムで一次審査を行います。何人かで手分けして行うのですが、この作品はどうしても残したいというものを二次審査します。二次審査にはcinefilさんも加わりノミネート作品を決定します。ジャック&ベティさん、cinefilさん、ガチンコ・フィルムで最終審査をしていく、という流れです。
――過去応募された監督で、今活躍されている監督はいらっしゃいますか?
「HAPPY MUS!C」映画祭に参加した奥田裕介監督をジャック&ベティの30周年企画映画に起用し製作した『誰かの花』という作品は、第34回東京国際映画祭のアジアの未来部門でアジアの監督10人に選ばれて上映されました。
あとは上村奈帆監督。近年、監督としても活躍している上に『市子』『ザッケン!』の脚本家としても実績を重ねています。
今後も独立の気概ある作品を支援していく
――監督さんの話を聞くと、自主映画をつくるとき中々利益を出すことは難しいですよね。自主映画は何十年もいろんな人がチャレンジしていますが、この状況をどうご覧になっていますか?
自主映画は「初期衝動」で監督がつくるものと思っているんです。利益のことをどうこう言うのであれば自主映画をつくることは難しいかなと僕は思います。
中小の製作会社やミニシアターの構造的な問題で利益が出にくくなっていることは確かにあります。
――映画業界がよくなるためには、どのようにしていったらいいと思いますか?
僕ができることといえば、できる限り良質な作品をつくり、観ていただく環境を整えるということでしょうか。業界全体を変えるほど僕は力がないので。
――横濱インディペンデント・フィルム・フェスティバルの展望は?
もともとの成り立ちがありつつも、インディペンデント、『若手映画監督を支援する映画祭』という映画祭のコンセプトをしっかり、という今の規模感で長く続けていくことが大切だと思っています。
開催概要
横濱インディペンデント・フィルム・フェスティバル2024

日時:2024年11月9日(土)
【上映スケジュール・詳細等】
2024年度 優秀作品
全269作品(短編72作品 / 中編105作品 / 長編47作品 / アニメ―ション13作品 / U22 32作品)より14作品が優秀作品として選出されました。優秀作品は11/9(土)横浜シネマ・ジャック&ベティで上映されます。プログラムの発表までお待ちください。
▼短編部門
サリエルファンタジー|塩出太志|10分27秒|2024年|日本
IVA-LeO(≠宝石とピストル)|加島大靖|14分45秒|2024年|日本
氷河期サウナ|吉田有佑|12分45秒|2023年|日本
▼中編部門
サーシャの坂道|大根田良樹|22分00秒|2023年|日本
いか、くじら、たこ、わたし|安田幸平|28分07秒|2024年|日本
BLEND # 1974|風来漢あき|37分30秒|2024年|日本
▼長編部門
彗星事変|YANG HENGSI|66分31秒|2023年|中国 日本
ある運び屋の鍵|森幸光|91分|2024年|日本
▼アニメーション部門
ぼくはもぐら|川﨑技花|12分25秒|2024年|日本
まよなかの探しもの|武田明香里|14分55秒|2023年|日本
神々来々|武田椿|10分 26秒|2024年|日本
▼U22部門
夜下がりの時間|廣瀬萌恵里|42分|2020年|日本
藪に惹かれ|丸山晶|21分49秒|2024年|日本
マジメのススメ|真田大誠|10分35秒|2024年|日本
井村哲郎
以前編集長をしていた東急沿線のフリーマガジン「SALUS」(毎月25万部発行)で、三谷幸喜、大林宣彦、堤幸彦など30名を超える映画監督に単独インタビュー。その他、テレビ番組案内誌やビデオ作品などでも俳優や文化人、経営者、一般人などを合わせると数百人にインタビューを行う。
自身も映像プロデューサー、ディレクターであることから視聴者目線に加えて制作者としての視点と切り口での質問を得意とする。