若きクリエイターを東北の地で発掘しています。製作費上限1億円のスカラシップ制度をぜひ目指してほしい
山形国際ムービーフェスティバルとは
――山形国際ムービーフェスティバルは、どのように始まったのでしょうか。
2024年で20回目を迎える山形国際ムービーフェスティバル(通称YMF)は、もともとは山形市の中心地である七日町にあった「シネマ旭」という映画館から2005年に始まったものです。
シネマ旭は2008年4月に「ムービーオンやまがた」へ生まれ変わりましたが、外観や内装は山形出身の工業デザイナーの奥山清行さんがデザインしたもので、特徴的なデザインになっています。奥山さんはエンツォフェラーリのデザインも手がけた人です。映画祭は3回目まではシネマ旭で開催し、4回目からこのムービーオンで開催しています。

ムービーオンは全部で10のシアターを持ち、映画祭はこのうちの2つのシアターで開催しています。東北各地のケーブルテレビ局が加盟する株式会社東北ケーブルテレビネットワークは、弊社及びダイバーシティメディア社長の吉村が社長を務めており、15社17局のネットワークになっています。この東北ケーブルテレビネットワークが映画祭の運営委員会を組織しています。
山形といえば山形国際ドキュメンタリー映画祭が有名ですが、こちらとYMFの映画祭2つの実績などにより、ユネスコの創造都市ネットワークに「映画」分野で加盟認定されています。
――スローガンは「才能よ、雪に埋もれるな。」ですね、これはアグレッシブで興味深いコピーですが、このコピーに込めた思いを教えてください。
このコピーは当時レッドライスメディウムに所属していた萩尾友樹さんが書いたものです。才能を持つ人はたくさんいると思うのですが、見つけ出すのは難しい。そういった人が埋もれないで出てきてほしい、という想いですね。
――山形国際ムービーフェスティバルのミッションやコンセプトはなんでしょうか。
若手クリエイターの発掘と育成です。若きクリエイターを発掘し、映画文化を東北の地から盛り上げていこうとスタートした映画祭です。

――映画祭は全国さまざまな場所で開催されていますが、山形国際ムービーフェスティバルは強い想いを持って運営されていますね。
我々は、2011年の東日本大震災があってさらに結束が強まったところがあります。各ケーブルテレビ局も被災して、ほぼほぼ経営が傾きかけていたときに「東北を明るくしたい、元気にしたい」という想いでさらに強固になりました。
――YMFの日程はずっと11月に開催されているのでしょうか。
はい、11月の2週目の金・土・日に開催しています。1回目・2回目は10月でしたが、山形国際ドキュメンタリー映画祭が10月開催なので、そこに日程が重ならないようにということで11月になった面もあります。
――YMFは招待作品とコンペ作品の2つが軸となり、3日間フルで2スクリーンで開催するのは規模が大きいですね。運営は大変だと思うのですが、ムービーオンのスタッフだけで運営されているのでしょうか?
運営はムービーオンのスタッフとダイバーシティメディアのスタッフが協力して行っています。今回から高校生や専門学校生のボランティアを募集しました。ムービーオンでは通常の映画上映業務もあるので、それも行いながらですね。

招待作品上映では多くの監督・俳優が舞台挨拶に訪れる
――招待作品では、作品に関係のある監督や俳優さんたちが登壇しますね。全作品で関係者が登壇されるようですが、招待すると来ていただける感じでしょうか。
そうですね、俳優さんは難しいにせよ、監督には来ていただけることが多いです。登壇して20分くらい話していただいています。
――協賛などはあるのでしょうか?
行政からの協賛はないです。東北ケーブルテレビネットワークや他の企業からの協賛ですね。
――入場料はありますか?
入場料はあります。入場料の他には広告収入があります。地元の企業に、パンフレットや当日バナーのようにボードを置いて「私たちは映画祭を応援しています」と表明していただいています。協賛金、入場料、広告収入がメインの収入です。
――YMFは3日間で何名くらいの集客があるのでしょうか?
3日間共通券などがあるので厳密な数字は出せませんが、1,000名ほどでしょうか。当初はほとんど人が入らなかったのですが、近年は山形の人たちにだんだんなじんできて、観客席の7~8割は埋まっています。
2024年から、コンペに短編だけでなく長編も加わる
――2024年から、コンペは短編と長編になったのですね。
今までは30分以内の短編のみでしたが、今年から短編と長編を分けました。今年は297作品の応募がありました。YMF審査委員長でもある村川透監督から「長編も募集してみては」という話があり、検討の末、今年から始めました。
――村川監督はずっと審査委員長なのでしょうか?
はい、村川監督には長年審査委員長をお願いしています。村川監督は山形出身で、現在も山形に在住しています。YMFには第1回目から参加していただいています。
以前YMFの招待作品において、松田優作さん出演の村川監督作品を上映したご縁で、松田美由紀さんにも審査委員を務めていただいています。
――コンペの審査はどういう形で行われているのでしょうか?
運営委員会などが予備審査を行い、ノミネート作品が決まります。2024年は297作品の応募の中から短編が7作品、長編が5作品選出され、合計12作品がノミネートされました。その中から審査委員が審査を行い、当日の審査委員会で話し合って決め、11月9日の表彰式で各賞を発表することになっています。
――審査委員が11人いらっしゃいますね。審査委員は2~3人という映画祭が多いですが、多彩な意見が出そうですね。
全体を観ての意見、俳優さんの演技、脚本など、さまざまな意見を出し合って進めているみたいですね。

――他の映画祭と比べて、YMFの際立つ特徴であるのがスカラシップ制度だと思います。制作費上限1億円というこの制度はかなり魅力的ですね。これはいつ頃から始められているんでしょうか?
YMFの最大の特徴としてスカラシップ制度があります。映画祭の第1回から行っていて、グランプリ受賞者、もしくはグランプリ該当なしの場合は準グランプリ受賞者がスカラシップを受ける権利をもらえるものです。
当初の資金は200万円~1,000万円で、11作品が誕生しましたが、2015年に上限1億円へ増額しています。受賞者の企画に基づいて製作委員会を立ちあげ、資金(製作費5,000万円・P&A5,000万円の合計1億円まで)、製作、配給などのバックアップを行い、劇場公開の商業映画として製作します。
――今後、YMFをどのように発展させていきたいですか?
YMFのコンペをもっと皆さんに知っていただき、若手クリエイターをたくさん発掘していきたいですね。巣立っていった監督さんたちは、必ず自分の新作を引っ提げて戻ってきてくれます。例えば2013年に観客賞を受賞した風間太樹監督は2022年のフジテレビのドラマ「silent」を演出しました。その風間監督が2024年5月に公開した『バジーノイズ』が、今回招待作品に入っているのですが、凱旋上映ですね。2014年に『オンディーヌの呪い』で準グランプリを受賞した甲斐さやか監督の、『赤い雪』を2019年に招待作品で上映しています。
映画祭をもっともっと多くの人に知ってもらいつつ、こういった監督さんたちのバックアップができれば、いつかは我々のところに帰ってくるんじゃないかな、と楽しみにしています。
開催概要
第20回山形国際ムービーフェスティバル

YMFプログラム
2024年11月8日(金)9日(土)10日(日)
会場 ムービーオンやまがた
■11月8日(金)
【ホール1】
12:30~ 招待作品「十一人の賊軍」
白石和彌監督・鞘師里保さん 舞台挨拶
15:40~ 招待作品「四十九 Seek」
シェイン・コスギ監督・浅野寛介さん・菜 葉 菜さん 舞台挨拶
17:40~ オープニングセレモニー
18:15~ 招待作品「あのコはだぁれ?」
清水崇監督・穂紫朋子さん 舞台挨拶
20:35~ 招待作品「FISHMONGER」
ATSUMI Kさん 舞台挨拶
(プロデューサーMEGUMI さん登壇の場合あり)
【ホール6】
ノミネート作品上映
13:00〜 Aプログラム(短編部門)
『Lelaina』 長棟航平監督
『EXHIBIT』 岡本多緒監督
『川面に聴く』 藤森圭太郎監督
『馬橇の花嫁』 逢坂芳郎監督
『⿇雀と指輪』 野村次郎監督
『Life record』 矢野瑛彦監督
『stein』 SUBARU監督
15:55〜 Bプログラム(長編部門)
『The Pageant』 髙木聡監督
『四角の中の人たち』 渡邉裕也監督
『コラン・ド・プランシーの万年筆』 山本大策監督
19:05〜 Cプログラム(長編部門)
『ボールドアズ、君。』 岡本崇監督
『白縹』 上條大輔監督
■11月9日(土)
【ホール1】
8:45~ 招待作品「くすぶりの狂騒曲」
立川晋輔監督・和田正人さん・タモンズさん 舞台挨拶
11:05~ 招待作品「バジーノイズ」
風間太樹監督 舞台挨拶
13:40~ 招待作品「ロストケア」
前田哲監督・鈴鹿央士さん 舞台挨拶
16:15~ 招待作品「Pure Japanese」
ディーン・フジオカさん 舞台挨拶
18:30~ YMF2024表彰式
20:05~ レセプションパーティー
【ホール6】
ノミネート作品上映
9:00〜 Aプログラム(短編部門)
『Lelaina』 長棟航平監督
『EXHIBIT』 岡本多緒監督
『川面に聴く』 藤森圭太郎監督
『馬橇の花嫁』 逢坂芳郎監督
『⿇雀と指輪』 野村次郎監督
『Life record』 矢野瑛彦監督
『stein』 SUBARU監督
11:40 短編監督トークセッション
12:25〜 Bプログラム(長編部門)
『The Pageant』 髙木聡監督
『四角の中の人たち』 渡邉裕也監督
『コラン・ド・プランシーの万年筆』 山本大策監督
15:35〜 Cプログラム(長編部門)
『ボールドアズ、君。』 岡本崇監督
『白縹』 上條大輔監督
17:30 長編監督トークセッション
■11月10日(日)
【ホール1】
9:00~ 受賞作品上映
10:30~ 招待作品「最も危険な遊戯」
村川透監督 舞台挨拶
12:35~ 招待作品「52ヘルツのクジラたち」
成島出監督 舞台挨拶
15:25~ 「BLUE FIGHT ~蒼き若者たちのブレイキングダウン~」スペシャルトークショー
溝口勇児さん・木下暖日さん・TERUさん
16:10~ 招待作品「アイミタガイ」
中村蒼さん 舞台挨拶
18:15~ フィナーレ
公式サイト https://movieon.jp/ymf/
井村哲郎
以前編集長をしていた東急沿線のフリーマガジン「SALUS」(毎月25万部発行)で、三谷幸喜、大林宣彦、堤幸彦など30名を超える映画監督に単独インタビュー。その他、テレビ番組案内誌やビデオ作品などでも俳優や文化人、経営者、一般人などを合わせると数百人にインタビューを行う。
自身も映像プロデューサー、ディレクターであることから視聴者目線に加えて制作者としての視点と切り口での質問を得意とする。