
経営を引き継いだときは1スクリーン、現在は3スクリーン
今回のミニシアター探訪は長野千石劇場。
どんな映画館なのだろうかとあれこれ想像しながら長野駅に降り立った。
地図を見ると長野駅から徒歩数分。駅前から路地を少し入ると、長野千石劇場が見えてきた。かなり古そうな建物だ。ポスターの貼り方も昔ながらの風情を感じる。
支配人の大澤さんを訪ねて、色々と話を聞いてみた。大澤さんは長野千石劇場の4代目の支配人である。
長野千石劇場の創業は1950年。戦後5年のまだ世の中が安定していない時代であり、映画が娯楽の中心であった頃だ。

創業の経緯を少し詳しく聞いてみた。元々はこの土地と建物のオーナーが1950年に今の長野千石劇場を設立したとのことである。今、長野千石劇場を運営している松本興行は、やはり戦後まもない頃から長野県の松本市を中心に複数の映画館を運営しており、オーナーが松本興行に長野千石劇場の経営を依頼し、その時から松本興行が経営するようになった。
経営を引き継いだときは2階席まである1スクリーンだったが、昭和50年代に3スクリーンに分割したそうである。元々洋画を上映していた劇場であり、この頃洋画の本数が増えたので3スクリーンにしたそうだ。
私が実際に行ってみて感じたのは、とても1スクリーンを分割したとは思えないほど各スクリーンが独立した空間になっていた。今でいうリノベーションみたいなものであろうか。

「できるだけ多くの作品を上映したい」想い
大澤支配人が長野千石劇場で働き始めたのが2016年、大澤支配人に編成の方針を聞いてみた。元々は洋画中心の映画館であったが、2016年頃は洋画が少し元気がなかったので、徐々に邦画や単館系の作品を多く取り揃えるようになったとのことである。
お客様から「こんな作品は上映できないか」とリクエストされたり、インディーズ系の配給の依頼もあったりで、小規模の作品も上映するようになってきた。

長野千石劇場ではできるだけ多くの作品をかけていきたい、と支配人は考えているそうだ。「長野県の人は、長野で上映されていない映画を新潟や東京へ観にいくという人もいて、それであれば当劇場でできるだけ多くの映画を上映して、ぜひ長野で観てもらいたいという気持ちがあります」。
映画館にとっては編成や精算は大変な業務だと思うが、このように包容力のある映画館はお客様にとっても配給側にとってもありがたい存在だ。

夏休みに映画を楽しんでもらう、地元との連携
地元との連携についても聞いてみた。
大澤支配人が学生の頃、長野県が夏休み前などに県内の小・中学校に映画の割引券を配布していたそうである。

時代と共にこのような取り組みは少なくなっていったが、長野県から学校に推薦映画を紹介する取り組みが行われ、推薦映画になった映画の割引券を近隣のミニシアターが共同で発行したりもしている。
私が取材に行った時には、常連と思われるお客様が訪れていた。ミニシアターを訪れていつも思うのは、観たい映画を観に行くというよりも、映画館に行くことを目的にしている人が一定数存在するということだ。これはシネコンにはあまりないことではないかと思う。
長野千石劇場は再開発エリアに入っており、再開発後に映画館として残るかはまだ決まっていないそうだ(2025年6月現在)。大澤支配人は再開発後も映画館として営業を続けたいと思い、頑張っている。

再開発のスケジュールは未定だが、開始される前に“味のあるミニシアター”長野千石劇場に、ぜひ足を運んでみてほしい。
長野千石劇場
住所
長野県長野市南石堂町1367
電話番号/FAX
026-226-7665
席数
スクリーン1 200席
スクリーン2 100席
スクリーン3 40席
劇場ホームページ http://www.sengokugekijyou.com/index.html
X https://x.com/sengokugekijyou
Instagram https://www.instagram.com/sengokugekijyou/