東京学生映画祭のコンセプトや運営について
――東京学生映画祭は2025年で36回目ですね。とても伝統ある映画祭ですが、どのような経緯で創設されたのでしょうか?
東京学生映画祭のコンセプトや運営について
――東京学生映画祭は2025年で36回目ですね。とても伝統ある映画祭ですが、どのような経緯で創設されたのでしょうか?
1987年に、今の早稲田映画まつりの前身の早稲田大学のサークルの合同上映会がありました。早稲田映画まつりで知り合った有志たちで、早稲田映画まつりとは別に1988年に17の大学で学生映画の上映会を開催したのが始まりです。昔の資料を読むと、1988年は今のようなコンペではなく、参加した大学の学生が自分たちでつくった映画を上映して、プロの審査員を呼んで講評してもらうというスタイルだったようです。第5回目の開催からコンペ形式になりました。

――東京学生映画祭のコンセプトを教えてください。
第36回のコンセプトは「違い/Révolutionnaire」です。Révolutionnaireはフランス語で「革命」という意味です。このコンセプトは「それぞれの違いを活かした上で、革命的であってほしい」ということです。
――学生の皆さんで運営されているのですね。
そうです。全てを学生たちで行います。今年は事務局は全部で21人いて、管理系、進行系、広報系に分かれています。大学も異なり、学業や就活との兼ね合いもある中、運営はなかなか大変です。
――事務局の人はそれぞれの大学の映画研究会の人が多いのですか。
いえ、事務局には映画研究会の人はほとんどいません。作品を応募してくる方に映画研究会の人が多いですね。
事務局の学生がまず審査。特別企画は京都国際学生映画祭とコラボあり
――映画祭にはコンペと特別企画がありますね。まずコンペから伺いますが、今回の応募作品数や審査方法を教えてください。
今回は193作品の応募がありました。その中から上映するのは9作品になります。審査は一次審査、二次審査、三次審査を私たち事務局が手分けして観て、事務局のそれぞれの担当が、推す作品を議論しながら決めていきます。最終審査はゲスト審査員の映画監督に審査していただき、グランプリが決まります。
――審査員も事務局の皆さんが決めて交渉するのですね。
はい、そうです。審査員の方の選定から交渉まで、全て学生である事務局が行います。

――どのような賞があるのでしょうか?
年によって変わる部分もあるのですが、基本的には「グランプリ」「審査員特別賞」「観客賞」になります。今年は実写、アニメの部門でそれぞれグランプリと審査員特別賞を設けています。観客投票による観客賞は部門関係なく全体から選出します。ノミネートされた9作品のうち、5作品が実写、4作品がアニメとなっています。
――開催場所について教えてください。
渋谷のユーロライブで8月16日・17日に上映します。ユーロライブは約180席あるので、多くの方に来ていただきたいですね。
――東京学生映画祭で受賞して、現在活躍されている監督にはどのような方がいらっしゃいますか
初期には、亡くなられた青山真治監督(『EUREKA』など)が受賞されています。2012年には、山戸結希監督が『あの娘が海辺で踊ってる』で審査員特別賞を受賞しています。山戸監督は菅田将暉さんと小松菜奈さんが出演した『溺れるナイフ』の監督に抜擢されました。
――事業収支も考えなければいけませんね。
作品の応募時にエントリー料をいただいています。開催日の入場料は、学生はコンペティションプログラムのみ無料ですが、一般の方からは入場料をいただきます。あと企業からの協賛もとても助かっています。今年はAdobe株式会社さんがメインの協賛になってくださいました。
――特別企画についても教えてください。今年はどのような企画を行うのでしょうか?
特別企画は8月16日が「あの時」というテーマで主に2000年頃に製作・公開された映画を上映します。塩田明彦監督の『害虫』、舩橋淳監督の『Talkie & Silence』などを上映します。
8月17日は京都国際学生映画祭とのコラボ企画で、それぞれおすすめの映画をセレクションして上映する企画もあります。この日は竹林亮監督の『大きな家』の上映もあります。この作品は俳優の齊藤工さんがプロデュースして2024年に話題になった作品です。
コンペも企画も見どころ満載なので、ぜひ足をお運びいただきたいです。
第36回東京学生映画祭

日程
2025年8月16日(土)~ 8月17日(日)
場所
ユーロライブ 東京都渋谷区円山町1−5
スケジュール
8月16日(土)
〈オープニング特別企画「音楽は生きている」〉
10:00 受付、入場開始
10:10 ヴィンセント・ムーン監督「花々の過失」
11:20 塩田明彦監督「害虫」
〈コンペティション実写部門Aプログラム〉
13:00 受付、入場開始
13:10 開会のご挨拶
13:15 橘卓見監督「姿」
14:12 赤川純監督「春一番」
14:30 トーク
〈審査員企画「あの時」特集上映〉
15:00 受付、入場開始 15:10 舩橋淳監督「Talkie & Silence」
15:27 原一男監督「またの日の知華」
17:13 井筒和幸監督「のど自慢」
19:10 トーク
〈コンペティション実写部門Bプログラム〉
20:00 受付、入場開始
20:10 芹沢日向監督「私の記憶が確かならば」
20:27 岩坂桂監督「コードネーム」
21:14 永山凜太郎監督「いえあおう」
21:20 トーク
8月17日(日)
〈「大きな家」企画上映+パネルディスカッション〉
10:00 受付、入場開始
10:20 竹林亮監督「大きな家」
12:25 パネルディスカッション
〈緊急企画 学生学生映画×京都国際学生映画祭〉
13:00 受付、入場開始
13:12 ⼤権早耶佳監督「いうなれば、黄昏」
13:35 れきな監督「トウモロコシとハイビスカスのミルク煮」
13:56 張宇軒監督「La nuit des illusions〜迷走の夜〜」
14:03 舩橋淳監督「echoes」
15:15 京都国際学生映画祭特設プログラム(近日公開)
16:50 トーク
〈コンペティションアニメーション部門Cプログラム〉
17:30 受付、入場開始
17:54 猫本玄監督「つつじの坂」
17:59 はるおさき監督「おばけ猫のレシピ」
18:07 姜暁萌監督「私の目に映る罪、あなたの目に映る私」
18:11 熊谷萌花監督「バラのような君」
18:20 トーク
〈授賞式〉
19:00 受付、入場開始
19:20 開始
20:20 終了
公式
Webサイト
https://tougakusai.jp/
井村哲郎
以前編集長をしていた東急沿線のフリーマガジン「SALUS」(毎月25万部発行)で、三谷幸喜、大林宣彦、堤幸彦など30名を超える映画監督に単独インタビュー。その他、テレビ番組案内誌やビデオ作品などでも俳優や文化人、経営者、一般人などを合わせると数百人にインタビューを行う。
自身も映像プロデューサー、ディレクターであることから視聴者目線に加えて制作者としての視点と切り口での質問を得意とする。